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高松高等裁判所 平成7年(ネ)374号 判決

主文

本件控訴及び本件附帯控訴をいずれも棄却する。

控訴費用は控訴人の、附帯控訴費用は被控訴人の各負担とする。

事実及び理由

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴人

(控訴の趣旨)

1 原判決中、控訴人敗訴部分を取り消す。

2 被控訴人の請求を棄却する。

3 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

(附帯控訴の趣旨に対する答弁)

1 本件附帯控訴を棄却する。

2 附帯控訴費用は被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

(控訴の趣旨に対する答弁)

1 本件控訴を棄却する。

2 控訴費用は控訴人の負担とする。

(附帯控訴の趣旨)

1 原判決中、被控訴人敗訴部分を取り消す。

2 控訴人は被控訴人に対し、金二〇七万五九四七円及び内金二〇七万四三〇一円に対する平成三年八月三一日から完済まで年一〇・九五パーセントの割合による金員を支払え。

3 訴訟費用は、第一、二審とも控訴人の負担とする。

第二  事案の概要並びに証拠関係

本件事案の概要は、次のとおり付加、訂正、削除するほか、原判決事実及び理由の「第二 事案の概要」の控訴人・被控訴人間に関する記載のとおりであり、証拠関係は原審及び当審記録中の証拠関係目録記載のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決二枚目表七行目の「連帯」を「信用」と改め、同三枚目表四行目の「条項違反」を削除し、同枚目裏五行目の「連帯」を「信用」と改め、同四枚目表一行目の「代位弁済額」の次に「及びこれ」を加える。

二  同五枚目裏七行目から同末行目までを、次のとおり改める。

「しかも、伊予銀行の担当者は、控訴人が右のような錯誤に陥っていることを知っていたか、わずかな注意を払うことによってこれを知ることが可能であったが、このように、表意者の相手方に悪意又は重過失が存する場合には、錯誤が意思表示の内容として表示されているか否かを問題とすべきでない。

仮に、被控訴人に悪意又は重過失がない場合は、福住修三の本件借入金返済が不可能もしくは著しく困難であるとの事情が存在しないことが、控訴人・被控訴人間において契約の前提となる基礎事情であって、当然の了解事項とされているのであるから、控訴人の錯誤は黙示的に表示されているとみるべきである。」

三  同六枚目表三行目の「原告」を「控訴人」と改め、同四行目の後に、次のとおり加える。

「(当審における新主張)

控訴人は、甲二(本件貸付契約書)及び甲七(本件信用保証委託契約書)に署名捺印する際、それらが乙一(限定根保証約定書)の書き直しのための書類であると錯誤していたが、右錯誤はその内容に照らして要素の錯誤に当たる。」

四  同七枚目表七行目の「取消ができる」の次に「ので、これを取り消す」を加え、同一〇行目の「公的」を「公共的」と、同八枚目表八行目の「使用」を「明示」と改め、同八枚目裏九行目の「全部免責」の前に「例外的に、」を加え、同一〇行目の「考え方もある」を「こともある(以上の旧債振替禁止条項に対する解釈は、控訴人・被控訴人間で争いがないから、裁判所は、右解釈に従って判断することが義務付けられている。)」と改める。

第三  争点に対する判断

争点に対する判断は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決事実及び理由の「第三 争点に対する判断」の控訴人・被控訴人間に関する記載のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決一五枚目表末行目の「玉井國夫」の次に「、原審証人高岡弘之」を加え、同一八枚目表四、五行目の「断定できるか、疑問がある。」を「認めるに足りる証拠はない。」と改める。

二  同一八枚目裏五行目の「認められず」から同八行目末尾までを次のとおり改める。

「、本件全証拠によるも認められない。

控訴人は、伊予銀行の担当者に、控訴人の錯誤について悪意又は重過失が存したので、控訴人の錯誤が表示されていなくとも、錯誤の成立を認めるべきである旨主張するが、伊予銀行の担当者に右悪意又は重過失が存したことを認めるに足りる証拠はない。

また、控訴人は、福住修三の本件借入金返済が不可能もしくは著しく困難であるとの事情が存在しないことが、控訴人・被控訴人間において契約の前提となる基礎事情であって、当然の了解事項とされていたのであるから、控訴人の錯誤は黙示的に表示されているとも主張するが、右に説示したとおり、保証契約は、元々、債務者の無資力等に備えるものであるから、控訴人主張の右事情が本件保証の基礎事情になっていたと認めることはできない。

さらに、控訴人は、甲二(本件貸付契約書)及び甲七(本件信用保証委託契約書)が乙一(限定根保証約定書)の書き直しのための書類であると錯誤していた旨主張するが、右錯誤が存しなかったことは、先に説示したとおりである。」

三  同一九枚目裏九行目末尾に続けて「このことは、本件の事実関係の下においても同様である。」を加える。

四  同二一枚目裏二行目の「一四〇〇万円中」を「一四〇〇万円は」と改め、同四行目の「四〇〇万一〇六六円」の次に「及び被控訴人の認めていない旧債振替二〇〇万円に使用されていることが認められる。このうち、被控訴人が保証条件とした旧債振替二件七一八万六六五一円は、被控訴人がその資金使途として認めているものであり、印紙代二万円及び信用保証料七九万二二八三円は、本件借入及び本件保証に必要な経費であって、その意味では運転資金の性格を有すると解しうるから、保証契約上の資金使途違反に当たるとは解されないし、福住修三が預金口座から出金して使用した四〇〇万一〇六六円が運転・設備資金として使用されなかったことを認めるに足りる証拠はないから、これら」を加える。

五  同二一枚目裏六行目の後に、次のとおり加える。

「なお、証拠(乙四、二三、二四、原審証人高岡弘之)によれば、本件借入金一四〇〇万円から印紙代二万円及び信用保証料七九万二二八三円が差し引かれた一三一八万七七一七円が福住修三の伊予銀行預金口座に入金された際、同預金口座に貸越約定(貸越限度額三〇〇万円)が付いていて、その残高が貸越二九九万二一〇八円となっていたことから、貸越のある場合の通常の処理方法に従って、右入金額によってまず右貸越額が返済されるという処理が行われ、右貸越状態が一時的に解消されたこと及びその後、福住修三は、右貸越限度額の範囲内で、同預金口座から出金して使用していったことが認められるところ、控訴人は、右貸越額返済をもって、資金使途違反・旧債振替禁止条項違反であると主張する。しかしながら、右認定事実によれば、右貸越額が返済された時点で、その貸越約定が終了し、右貸越約定上の債務が確定して、それに対して返済がなされたというものではなく、その後も右貸越約定は継続し、貸越限度額の範囲内で貸越がなされていったのであるから、これをもって、保証契約上の資金使途違反・旧債振替禁止条項違反に当たるとはいえない。」

六  同二三枚目裏五行目の後に、次のとおり加える。

「なお、控訴人は、旧債振替禁止条項に対する解釈は、控訴人・被控訴人間で争いがないから、裁判所は、控訴人の主張する解釈に従って判断することが義務付けられていると主張するが、被控訴人は、旧債振替禁止条項に関する控訴人の解釈を争っており(平成八年四月二三日付け被控訴人準備書面の第三項参照)、また、契約文言の解釈は自白の対象にならないのであるから、いずれにしても、控訴人の右主張は失当である。」

七  同二五枚目表三行目の「主張する」を「主張し、原審証人高岡弘之は同主張に沿う証言をする」と、同枚目裏五行目の括弧書き部分を「(甲二、原審証人高岡弘之)」と、同二六枚目表四行目の「むしろ」から同六行目末尾までを「この点も考慮すると、被控訴人の右主張に沿う原審証人高岡弘之の証言部分は措信できず、他に被控訴人の右主張を認めるに足りる証拠はない。」と改める。

第四  結論

よって、原判決は相当であって、本件控訴及び本件附帯控訴はいずれも理由がないから、これらを棄却することとし、控訴費用及び附帯控訴費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

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